アメリカのクルマのセールスマンは、とにかく海千山千。日本の信頼できるディーラーの人とは全く違うと思ったほうが良いです。セールスマンは完全歩合制なので、売らないと自分の生活も成り立たない。無理にでも売ろうとする。 特に、「中古車のセールスマン」というのは、「信頼できない人」の代名詞のように言われている。僕が言うのもなんだけど(笑)。
それで、一番多い失敗の話は、ふらっと立ち寄ってクルマを見に行くつもりが、話している間に買わされてしまったということ。アメリカのセールスマンは、話がうまいし、訓練されている。初めてショールームに来た時に売らないと、95%の客は戻ってこないと教育されていて、彼らも必死。ディーラーに行くととにかくその場で決断を迫られることが多いのです。
よく言われるのは、「いくらなら買う?」という言葉。それで、こちらが金額を言うと、「あなたのために、奥でマネージャーと相談してくるので待っていてくれ」。 毎日クルマを売っているセールスマンが、売ることができる金額の下限を知らないわけがないですよね(笑)。しばらく待たされるけど、奥では関係ない世間話をしています。 それで、戻ってきたときには、「その値段は無理だけど、ここまで頑張った。調べたらこのエリアにはあと1台しか希望の車種と仕様はなくて、しかも他のセールスマンがほかの客と商談中だ。今決断すれば、そのクルマを押さえることが出来る。」と言ってくる。
もちろん、1台しかないのもほかの人の商談というのも全くのウソです。大体、月に2~3回はディーラーには在庫車が納車されるし、他の人に取られそうだという心理を与えて、今決めさせようという魂胆です。
でも、日本人が行って英語で交渉しようとすると、言葉と雰囲気でまくしたてられてしまい、ほんとなら見破ることが出来る怪しさにも気が付かない。さらに言うと、ディーラーの人はみんな良い人に見えます。実はそれも作戦で、「こんな良い人を自分のために2時間もつき合わせて買わないと悪い」という気持ちを起こさせるための心理戦なのです。
それでもその結果、希望のクルマが買えればそれでも良いのですが、トラブルの話を多く聞きます。例えば、安く買えたと思っていたら、新車のつもりで買ったのに実は新車ではなかったという話。セールスマンは、別に新車を売ると言っていなかったので、ウソではないと主張します。でも本当は、もちろんわかってやっているのです。他にも、仕様があまり魅力的ではない前の年のモデルを買わされてしまったり、ローンで買ったと思ったら、実はリースだったということもありました。本当に注意しなければいけません。
あとは、価格のことではこんなこともやってくる。車体本体価格にメーカーからディーラーに納車するときのフレートチャージというのがあって、これは大体、850ドルくらいかかるものなんですね。すべてのクルマにかかる費用で、省くことができないものです。
でも、価格の交渉の時には、これをわざと計算から除いて合計金額を話すのです。それで、口頭で合計金額を出して、割安感を感じさせる。でも、契約の時にはもちろんこの費用は足されている。聞いてみると、わざわざ言うまでもない当たり前のことですから、という雰囲気で説明をしてくるだけ。でも、これも分かっていてわざとやっていること。
インターネットでメールの問い合わせをした時も同じ。このフレートチャージが入っているかどうか聞いた方が良いことがあります。非常にあいまいに見積もりを言ってくることが多いので。
例えば、トヨタヤリス(日本名ヴィッツ)ですが、テレビで1万4千ドルですと言っているとします。それにつられてディーラーに行ってみると、実はこの価格は、マニュアルのエアコン無しの車体価格です。それで、オートマチックにして、エアコンをつけてとやっていくと大体1万6千ドルですね、と言われます。ちょっと高くなってしまったけど、仕方がないかと思っていると、契約書の段階では消費税とフレートチャージが足されて1万7千500ドル近くになっています。それで、勢いに押されてサインさせられてしまう。数字を書いた紙は最後まで見せてくれません。
もちろん、うちではこんなことはやりません。お客さんとは信頼が大切。お互い時間も無駄だし、最初から紙に書いてこういう内容になりますよとお客さんに見せる。日本では当たり前のことなんだけど、これをきちっとやっているディーラーは本当に少ない。
記者:SFFLでは、何度も買われるリピーターのお客様も多いと聞きますが。
次のクルマもうちで、と言ってくれるお客さんが多いです。まあ、24年もやっていますから。赴任でこちらに来てクルマを買ってくれて、一度日本に帰るんだけど、また来た時にはまたうちで買ってくれるというお客さんは非常に多いです。